皆さん、こんにちは。
Motivation Maker の海津です。今回はMotivation Maker (MM)による大人向けワークショップで、「モノ作り」をテーマとしたイノベーション・ワークショップついてお話ししたいと思います。
MMは「未来のおとなにモチベーション、今の大人へイノベーション」というミッションを掲げていますが、昨年の12月から今年の2月にかけて、八王子のモノ作り中小企業の皆さんを対象に4回シリーズでイノベーション・ワークショップを開催しました。震災が起きた年ということもあり、最終日には「震災後に起きた社会の変化を発想の起点として、新しい事業アイデアを創出する」というゴールを目指してワークショップをしました。
ところで八王子という地域、皆さんはご存知ですか?
意外と知られていないのですが、東京大田区のようにモノ作り中小企業が集まっていて、とくに電気機械、精密機器系の中小企業が多い地域です。八王子市も製造業を重視しており、ワークショップは八王子市とTAMA協会(Technology Advanced Metropolitan Area: 技術先進首都圏地域)との恊働で、「八王子から世界を変える!イノベーション体験塾」のコンテンツとして実現しました。(こんなに尖ったタイトルの社外研修、これまでにあったでしょうか!)
さて、なぜMMがモノ作り中小企業に関心を持ったのか。
そこにはイノベーションの可能性を感じるからです。
皆さんが普段使っているクールなデバイスたち、例えば最先端のスマートフォンやデジカメなどは、多くのモノ作り中小企業の部品を使って作られています。これらの企業は高い技術力を誇るだけでなく、フットワーク軽く、求められるプロダクトを素早く作り出せたりします。
もし高い技術力を持ったモノ作り中小企業と、イノベーティブなアイデアが掛け合わさったら、どんなことが起きるでしょう。
これが、MMが期待する可能性です。
これまで日本の製造業は、その高い技術力に裏付けられたプロダクトを世に送り出し成功を収めてきましたが、今、モノ作りに求められているのは、ライフスタイルを豊かにするプロダクトの気もします。MMは「人間中心のイノベーション」をモノ作りで実現できれば、世の中がもっとワクワクしたものになると考えています。
前置きが長くなってしまいました。
さっそくワークショップの様子を簡単に紹介しましょう。
(1日目)
まずワークショップの参加者の皆さんとアイスブレイクで盛り上がった後に、「人間中心のイノベーション」とはどんなものなのかを考えました。モノを供給する企業から見ると、人の集まりは「市場」と捉えますが、「人間中心のイノベーション」では市民のニーズから人の集まりを考え、「社会」と捉えます。そして、アイデア発想は自社の技術力を起点に考えるのではなく、まず社会のニーズを考え、それに答えるために自社の技術どう役立てるかを考えます。参加者の皆さんは「分かるような、分からないような・・・」といった感じでしたが、この後に続くワークショップを通して、実際に体験することになります。
次はさっそく本題です。ワークショップで大切な「人間中心」を考えるため、「震災を経て変化した自分や身近な人の行動、価値観の変化、問題意識」をポストイットにどんどん書き出して分類に分けし、そこにどんなニーズがあるのかを見いだしていきました。アイデア出しの基本は「質より量」。あまり考え込まずにクイックに書き出すことを心がけます。皆さん、ポストイットを使ったアイデア出しに慣れるのが早くて驚きました。最後は全体で共有しながら初日は終了。
(2日目)
この日の目標は「Design Challenge Map」を作成すること。初回のワークショップで少し体験した「震災を経て変化した自分や身近な人の行動、価値観の変化、問題意識」について、あらためてアイデアをだし、グループ化やロジック・ツリーなど駆使して分類分けをし、その震災を経て変わってきた社会のニーズを探りだします。ここで出てきたキーワードが最終日に発表する新規事業アイデアの機会領域になります。出てきたキーワードは「人とのつながり」「日常的に使えるもの/非日常で使うもの」「お金で買えるモノ/買えないモノ」「省いたら気付いた価値」などなど。なかなか興味深いキーワードが集まりました。
(3日目)
じつはこの日のワークショップは「授業参観」。なんと、参加している方の社長さんがワークショップを見学にくることに・・・。これまでのワークショップでは活気ある雰囲気が続きましたが、この回は何となく緊張感漂う中でスタートしました。(笑)
しかし、イノベーションを追求するMMのワークショップです。ただの授業参観で終わることはありません。さっそく経営者の方でグループを作り、飛び入りでイノベーション・ワークショップに参加してもらうことになりました。まずはアイスブレイクで「イノベーションを起こせる人ってどんな人?」というテーマでアイデア出しを試します。経営者の皆さん、初めはポストイットの使い方に戸惑いながらアイデア出しを始めましたが、一度要領を掴むと次から次へと出てきます。あっという間にポストイットが貼られていく様は圧巻でした。アイデアの1つに「イノベーションを起こせる人は経営者!」と書かれた経営者がいました。経営者は普段から自分の頭で考えざるを得ない役職ですね。イノベーション・ワークショップと経営者はとても相性がよいことが分かったことが思いがけない収穫でした。(ちなみに、イノベーションを起こせる人に「フリーター」と書いた方もいました。「経営者!」と答えた社長の会社の社員でした。 笑)
この日の本題は「Inspiration Materials Map」を作成し、すでにあるものの組み合わせで問題解決型のアイデア発想法を学ぶこと。日ごろ皆さんの身近にある「ユニーク」なプロダクトを集め、そのプロダクトについて、「何に面白さを感じたのか」を可視化していきます。これは最終回の新しい事業アイデアの発想を助けるツールとなります。
皆さんが集めてきたプロダクトはなかなかユニークなものが含まれていました。例えば「2輪駆動自転車」「自動お掃除ロボット」「twitter」「イヤホン付きパーカー」など。ここからユニークポイントをキーワードとして抽出し、Inspiration Materials Mapを作成しました。沢山ポストイットが貼られているのは、それだけ皆さんがユニークなプロダクトを見つけられた証拠です。
(4日目)
いよいよMMワークショップの最終日。これまでのワークショップの成果物をもとに、新規事業アイデアを考えていきます。2日目に作成した「Design Challenge Map」(事業領域)、3日目に作成した「Inspiration Materials Map」(発想のヒント)をもとに、新規事業のアイデアを出すという、4日間で最もチャレンジングな課題に向き合いました。この日はMM横田さんから「アイデア発想のコツ」も伝授されインプットも終了。あとは個人ワークとグループワークに時間をかけ、アイデアを形作っていきました。
おそらく全ての方が「時間が足りない・・・!」と感じたと思いますがタイムアウト。全体発表に移りました。出てきたアイデアは「遺言機能付き携帯電話」や転がすと光るボール「コロコロライト」、手で振ったり、靴底に仕込んだ仕掛けで発電する「フルフル」など。震災以後の社会の変化から見いだしたニーズに、モノ作り企業ならではの技術の裏付けが伴ったユニークなアイデアが揃いました。
(ワークショップを振り返って)
今回のワークショップを経験して一番印象に残ったことは、ワークショップに参加された企業の皆さんの頭の柔らかさでした。MMの伝えたいことの1つとして、「イノベーションは特定の天才だけが生み出せるものではなく、コツを掴むことで私たちでも生み出していける」というメッセージがあります。ワークショップでは社員の皆さんの発想の豊かさに触れ、本当にその可能性を実感しました。スポーツのトレーニングと同じで、初めはうまくいかなくても、続けることで少しづつ結果が見えてくると信じています。参加者の皆さんの今後に注目しています!