こんにちは。MMパートナーの天野です。
今日は先日一段落したプロジェクトのご紹介です。
慶應義塾の社会人教育機関である慶應丸の内シティキャンパス様にて行われた「イノベーション思考実践」に、私達MMのメンバーがサポーティングメンバーとして参加してまいりました。
この講座は東京大学i.schoolディレクターの田村大さんが講師を務めるもので、実際に企業に勤務されている社会人の方々(バックグラウンドも多種多様でした)が受講生です。
ビジネスエスノグラフィのメソッドに依拠して組み立てられたプログラムに沿って、人間中心イノベーション的な観点からのアイデアの発現を目指しました。
プログラムは全体で5日間で、1/25に始まり、4/2の最終発表まで講義外のリサーチ活動やミーティングなど含めて密度の濃い時間を過ごせたなと振り返っています。
それでは各セッションの内容とともに、全体のプロセスを簡単に振り返ってみましょう。
Session1 イノベーション思考とは Jan.25
この日は田村さんのレクチャーを中心に、イノベーション思考の枠組みについて知識を共有しました。
i.schoolの活動をはじめ、問題と解の新結合を目指す(ニーズ志向ともシーズ志向とも異なるような)イノベーションのコンセプトが語られました。
Session2 フィールドワークの準備 Feb.5
エスノグラフィを行う際には、その対象者(調査協力者 : participant)の選定が非常に重要です。
セッションではその選び方から、インタビュー/参与観察の調査における心構えまでレクチャーとディスカッションを通じて知見を深めました。
ここは実はビジネスエスノグラフィのプロセスにおいてとても重要なパートで、いわゆる平均的な人(正規分布のボリューム層に位置する人)ではなく、エクストリームユーザーと呼ばれる「ちょっと変な人」の生活環境に自分を浸し、その日常世界を追体験することで発想のためにインスピレーションを得るのです。
後々のアイデア発現セッションの成否を左右すると言っても過言ではない箇所にあたります。
※Session2とSession3の間にインタビュー/参与観察の調査として、participantの御自宅に各グループごとに赴きました。受講者の方々のお話を聞くと、この調査がプログラム全体を通じて印象度が最も高いものの一つになったそうです。
Session3 まとめる:集めた情報の整理 Feb.26
各グループがフィールドワークで得てきた知見をダウンロード(情報の棚卸し&共有のこと)し、エクストリームユーザーの生活世界から集められてきた情報=ファクトを頭の中に充填。それをもとに解決すべき問題の如何を特定し、自分達の発想の足場となるフレームワークをグループディスカッションを通じて構築していきます。
Session4 つなぐ:問題とアイデアの統合 Mar.5
前回セッションで仮構したフレームワークをさらに精錬しつつ、機会領域を絞り込んでいきます。これは自分達のアイデアが問題の全体構造の中でどこに効くものなのかを明確にしていくプロセスですが、それを通じてグループのアイデア=問題解決に資するソリューションを練成していきます。
i.schoolのWSの時も同じですが、やはり一番盛り上がりつつも議論の収束に苦労するフェイズですね。
Session5 伝える:発表とリフレクション Apr.2 (Mar.19は地震の影響で振替)
こうして各グループが生み出したソリューションを恒例のスキット形式で発表しました。
例えばこんな感じで!
そして発表に対しては、内閣府男女共同参画局や各種研究機関からのゲストからのフィードバックを頂きました。アイデアへの高い評価や実現に向けての期待が語られ、アイデアをより良いものにするためのヒントもたくさん頂戴できたと思います。
そしてその日の後半のセッションでは、5日間のプログラムで獲得した経験値を実務の領域に持ち帰るにはどうしたらいいのか、グループに分かれてディスカッション。
イノベーションを生むためにはまず組織的にイノベーティブなプロセスに着手することが重要だと思いますが、なかなか壁は厚いようで。ここから先は私達の実践にかかってくるということだと思います。
本筋からは多少それる締めの感想ですが、やはり二ヶ月半苦楽をともにして一つのソリューションに向けて努力すると信頼関係が芽生え仲が良くなるもので、受講生の方々とはもちろん、僕自身パートナーの岩田さんとより距離を縮めることができたように思っています。二人で赤坂に飲みに行ったりして楽しかったです笑。
イノベーションはある種のグループジーニアス(集団的な創造性)をどう発揮するかが鍵である以上、実は「メンバーと仲良くなる(信頼関係を築く)」ことが死活的に重要なのだと僕は感じます。アイデア出しの際のキレはもちろん、グループとして困難に立ち向かっていく時の組織としての凝集力に関わるからです。
今回の講座でまた従来にはない人と人との新結合が生まれたことは間違いありません。学生と社会人、それもこれだけ多様な人がつながることは珍しいと思います(ソーシャルグラフにおいて、ありえない線分が引かれたと表現しても良いでしょう)。ここで培われた人間関係は今後も続いていくはずですし、こうした場づくりが各所で成されていくことで、イノベーションに向けての生態系が整えられていくのではないかと確信しています。